- 時のコラム
- 第十二話:GSスプリングドライブクロノグラフ SBGC201
第十二話
「GSスプリングドライブクロノグラフ SBGC201」
う~ん、なんてバランスの悪い時計なんだろう・・・」
はじめてこの時計をカタログで見た時の正直な気持ちです。
大きく飛び出たプッシュボタンが存在感をアピールしすぎ。
セイコースタイルを受け継いでいるGSらしいケースや針・略字のデザインにクロノグラフ機構を無理やり融合させたような感じがして、ちょっと違和感を覚えました。
「ビジネス向きじゃない」
「スーツには合わないだろう」
「でも実物は印象が違うかもしれない」
「早く見てみたいな」
それからしばらくして、店頭にSBGC203(黒文字板のモデル)が入荷。急いで見に行ったのです。
よくあるシチュエーションに、『実際に本物を手にしてみたら・・・今までの悪いイメージが一変した。これは・・・なんてカッコいい時計なんだろう!』なんてのがありますが、私の感想は違いました。
「やっぱりバランスの悪い時計だな~」
実物を見てもやはり大きなプッシュボタンが気に入らないのです。黒い文字板のレイアウト・赤い24時針・目盛のデザインなどは非常に格好良く、見事にグランドセイコーの持つセイコースタイルとクロノグラフが融合したという“存在感”を主張しています。でも・・・どうしてもプッシュボタンが・・・。
ところがある日、店頭でSBGC201(白文字板のモデル)を目にしたのですが、なぜか今まで私がクロノグラフモデルに抱いていた「プッシュボタンが大きすぎる時計」というイメージが湧き上がって来ませんでした。それどころか『これは・・・かなりカッコいいかも』とまで感じてしまったのです。
「単に個人的な好みなのかな・・・」でも黒文字板モデルで感じたバランスの悪さが、この白文字板(正確には薄銀色ですが)モデルには一切なく、品格・気品さえ感じられるのです。なぜ・・・?
その答えらしきものが、最近ようやくわかりました。
このグランドセイコークロノグラフモデルのベースは「東京オリンピック計時機器」にあるそうです。当時のセイコー技術陣が心血を注いで開発したストップウオッチの技術がベースになっているとのこと。その当時のストップウオッチの写真を目にする機会があったのですが、文字板の色は『白』でした。もちろん例外もありますが、ストップウオッチといえば「白い文字板」というイメージが私の頭の中にはあります。
また、1960年から登場した歴代GSモデルの文字板の色、やはり圧倒的に「白系」が多い事にも気がつきました。あくまでも個人的主観ですが、セイコースタイルは「白系」の文字板でこそ映えるのではないでしょうか。
そこに、私の頭の中にあった「ストップウオッチは白い文字板」というイメージが加われば・・・SBGC201をカッコ悪いなどと思うはずもありません。他のクロノグラフモデルにはない「青焼き」の針も非常に良い感じです。
グランドセイコークロノグラフのラインナップには、スタンダードな黒文字板モデルのSBGC203、大胆な形状のラグが特徴的なSBGC253などがあります。
私の一番のお気に入りはやはり「SBGC201」ですが、最近では他のモデルもカッコいいな、と思えるようになってきました。
GSマスターショップモデルの中ではクロノグラフが一番のおすすめです!(T.M)